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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1947号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人對馬郁之進の上告趣意について。

いわゆる公文書僞造の罪を規定した刑法第一五五條第一項には、「公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書」とあって、公法關係において作成された文書」と言つているのではないから、貯金局名義を以て発行せられる郵便貯金通帳は、公法關係において作成せられるものであるか、私法關係において作成せられるものであるかの問題に拘わりなく、右の公文書であって、所論のような私文書ではない。(昭和五年(れ)第二〇三三號同六年三月一一日言渡大審院判決参照)。それは又刑法第一六二條にいわゆる有價證券でもない。それ故に原判決が本件被告人の所爲に刑法第一五五條第一項及び第一五八條第一項を適用したのは正當であつて、所論のような擬律錯誤の違法はない。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

以上の理由により刑事訴訟法施行法第二條、旧刑事訴訟法第四四六条、最高裁判所裁判事務處理規則第九條第四項に從い主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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